年老いた犬が余生を過ごすための施設のことを「老犬ホーム」といいます。少し耳慣れない言葉ですが、ペットフードや医療の発展で犬の寿命が延びて高齢犬が増える中、飼い主の方も高齢化してペットを飼えなくなるなどいろいろな事情から「老犬ホーム」のニーズが高まっています。寝たきりの犬、目が見えなくなった犬など健康状態もさまざまなため、介護は24時間体制。その現場は、想像以上に大変なものでした。


64頭が暮らす「老犬ホーム」

京都府京丹波町にある「老犬ホーム・あん」。いま、64頭の犬が暮らしています。平均年齢は14歳、人間にすると80代の高齢犬ばかりです。代表の福島耕太郎さん(49)。4年前にこの施設を立ち上げました。

「歯茎の色とか舌の状態とか全部チェックして、一通り見ていく。常に状態を把握できるようなサインが出てるんで、見落とさないように」(福島耕太郎さん)

犬の健康状態はさまざまです。脚が弱くなり足元がおぼつかない犬や、白内障になり目がほとんど見えない犬も。人間だけではなく、ペットの世界も高齢化社会を迎えているといいます。

ペットブームといわれた2000年代前半、犬の飼育頭数はピークに達しました。その頃に飼われた犬が十数年経ったいま、高齢犬となっているのです。また、高齢者が高齢犬を飼っていることも多く、飼い主が入院したり施設に入ったりしてペットが行き場をなくすことも多いといいます。

この施設にいるのは、みんな飼い主がいるペットたち。さまざまな事情があって、ここに預けられています。

「(飼い主が)無責任っていうひと言で片づける人も中にはいますけど、奥には深い事情がたくさんある。本当に飼い主さん、契約されるときでも泣きながらされる方がすごく多いです」(福島耕太郎さん)

施設の運営資金は、1頭につき月3万円ほどの預かり料と全国から集まる寄付金でまかなっています。エサやりやトリミングなど64頭の世話を妻の純子さん(48)とスタッフの3人でしています。


犬の“認知症”、24時間体制で介護も

犬の寿命が延びたことで、これまで見られなかった病気や症状があらわれる犬もいます。

「この子が柴犬の『あるえちゃん』。女の子で14歳。自立困難と、認知症で昼夜逆転の症状が出ています」(福島耕太郎さん)

この部屋にいるのは、寝たきりや認知症などで介護が必要な犬たち。ご飯も手を添えて食べさせてあげる必要があります。

「よく見とかんと、認知症入ってる子とか食べてるんやなって思ったら、ただ同じところをがちがち(食べずに)やってる。全然減ってないということが結構ある」(福島耕太郎さん)

水も自力では飲めないので、注射器で飲ませています。

Q.(ホワイトボードに)何をメモしてる?
「昼に水を飲んだ量です。だいたい毎日の量をチェックしといて、おしっこの量と見とけば、変化が起きたときにすぐわかる」(福島耕太郎さん)

認知症の症状は、夜中に顕著に現れるといいます。午前2時、部屋の中から犬の鳴き声が聞こえます。夜中の無駄吠えです。認知症の犬は、昼夜が逆転してしまい夜中に吠え続けることもあります。福島さんは深夜にも見回りをしています。

「夜中でも関係なく暴れたり吠えたりするので、やっぱりどうしてものども乾いてしまうし、そのままほったらかしにしてると脱水症状を起こしてしまったりする。ちょっとしたことがきっかけで体力が落ちたり、悪いものが出てきたりすることが非常に多い」(福島耕太郎さん)

昼間寝ている犬もいるので、深夜にエサやりをするなど介護は24時間体制です。


「犬たちがもう一回幸せに笑顔で暮らせるところでありたい」

福島さんは、自宅でも6頭の犬を飼っています。24時間の犬の介護の合間、数時間の休憩も犬に囲まれて過ごします。

「24時間犬の仕事をしてて、犬で悩むけど犬たちに癒される生活」(福島耕太郎さん)

もともと大阪に住み、運送会社で働いていたという福島さん。老犬ホームを始めたのは、20年ほど前のある経験がきっかけでした。子どもが捨て犬を拾って帰ってきたのですが、もともと飼っていたパグとの相性が合わず、捨て犬を別の飼い主に引き渡すことになったのです。その時の思いが、いまの活動につながっているといいます。

「犬たちがもう一回幸せに笑顔で暮らせるところでありたい。特に老犬の子らは残されている時間が少ないんで、これまでの生きてきた経験以上のものを何か経験させてあげたい」(福島耕太郎さん)

妻の純子さんは、どのように感じているのでしょうか。

Q.最初どう思った?
「まあいっか、というようなノリでした。はじめは8頭から始めたんですけど、困っている方が結構いるのがわかって頭数が増えた。自然のなかで犬と暮らす生活もいいかなっていう」(妻・純子さん)


「預けること=放棄とか無責任ではない」

この日は、施設で預かっている2匹の犬の飼い主の女性が面会に来ました。12歳の「もん」と「チャチャ丸」は女性の妹が飼っていましたが、半年前に妹が入院。女性は自宅ですでに別の犬を飼っているうえ、マンションには頭数制限があるため、引き取ることができませんでした。

「エサをあげて寝床を用意するくらいならできるけど、それは犬にとってはよくないので」(飼い主の女性)

2か月ぶりの再会。半年前に預けたときに比べてすっかり元気になった2匹にひと安心です。

「全然毛が生えなかったんです。ホルモンの影響って言われていた。この半年で、ここまでフサフサに。2匹とも生えてなかったんですけど、2匹ともフサフサになっている。ここの生活がストレスないのかなって」(飼い主の女性)

行き場のないペットが自由に余生を過ごすことができる老犬ホーム。福島さんはその必要性が高まっていると考えています。

「預けること=放棄とか無責任ではないし、かわいそうなことではない。いろんな選択があるうちのこれもひとつの選択肢だよねって、ポジションが確立できればいい」(福島耕太郎さん)


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MBSニュース 2/25(月)付記事抜粋





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