あまりの暑さで、カブトムシが次々と死んでいる――!? 記録的な猛暑が続いた2018年夏、こんな真偽不明の噂がインターネット上で広まっている。

 だが、カブトムシが「暑すぎて大量死」するなんてコト、本当にあり得るのか。J-CASTニュースが、噂の発端となった兵庫県内の観察施設や、カブトムシの生態に詳しい専門家に話を聞くと......。

■猛暑で「カブトムシ大量死」報道も

 カブトムシをめぐる今回の噂には、大きく分けて2つの出元があるようだ。まず1つは、兵庫県市川町の体験型施設「かぶとむしど〜む」で、放し飼いにされたカブトムシが次々と衰弱死していると、一部メディアに報じられたこと。

 2018年8月14日付の神戸新聞(ウェブ版)記事や、翌15日付の毎日放送(同)の報道によれば、この施設では今夏、累計3000匹近くのカブトムシが衰弱死。仕入れが難しい状況になり、16日で閉園となった。

 両メディアとも、カブトムシが衰弱した理由について「猛暑の影響とみられ(る)」と伝えていた。とくに神戸新聞の記事では、「過去約20年間で例のない被害という」とまで書いていた。

 もう1つの発端とみられるのが、8月2日にツイッターへ投稿された写真だ。木の周りの地面に、大量のカブトムシの死骸が落ちている様子を捉えた一枚だ。投稿者の学生は、

  「やっぱ今年は異常気象すぎる。カブトムシがそれを物語っている」

と、猛暑との関連を臭わせるコメントを添えていた。

 こうした情報を受けてか、ツイッターやネット掲示板には8月初旬頃から、

  「暑すぎて今年カブトムシ大量死してるらしいぞ」
  「カブトムシが暑さで衰弱死したらしい...。今年の夏の暑さがヤバイってのを感じた」
  「日本中のカブトムシがこの暑さで一斉に死んでると思っていいのかな」
  「暑さでカブトムシが3000匹衰弱死って聞いたんだけど本当にやばいとこまで来ている」

といった書き込みが相次いで寄せられる騒ぎとなっている。


「暑さでカブトムシが死ぬことは考えづらい」

 やはり、今年の歴史的な酷暑には、カブトムシも耐えられないのだろうか。J-CASTニュースが、「わたしのカブトムシ研究」などの著作で知られる山口大学大学院創成科学研究科の小島渉(わたる)助教に取材すると、

  「カブトムシは確かにそれほど高温に強くはありません。たとえば、気温40度くらいの中、直射日光に晒され続けたら、おそらく比較的容易に死んでしまいます」

と説明。だが続けて。「いくら今年が猛暑だと言っても、上のような状況は野外で簡単には起こりません」として、

 「基本的に彼らは夜行性ですし、昼間も餌場にいる場合はありますが、直射日光の当たるようなところにはいません。また、日が昇って気温が高くなってくると、彼らも危険を感じ、木陰に入るなり地面に潜るなりして暑さをやり過ごすはずです」

とコメント。そのため、「今年の暑さがカブトムシに与える影響は大きくないのではないかと想像しています」との見解を示した。

 では、市川町での事案はどうなるのか。小島氏は「現場の状況を見ていないので、正確なことは言えませんが」としつつも、「カブトムシが暑さを避けられない状況になっていたのでは」と指摘。その上で、

  「自然環境ですと、暑さでカブトムシが死ぬことは考えづらいですが、人工の環境だと、そうした可能性も考えられると思います」

としていた。


観察施設の大量死に「まさかの事実」

 では、市川町の「かぶとむしど〜む」の飼育状況はどうなっているのか。そうした事情を確認しようと、J-CASTニュースが16日に施設を受託運営する「クワちゃんハウス」(姫路市)へ取材すると、まさかの事実が明らかになった。

 なんと、この施設でカブトムシが大量死するのは例年のことで、特に珍しいことではないという。取材に応じた施設の男性従業員が、「正直、カブトムシが大量に衰弱死するのは例年のことですよ」と話したのだ。

 その理由を聞いてみると、「子供のための体験型施ですから」との答えが。つまり、子供が触ることでカブトムシが弱るため、例年、営業期間中に多くの個体が死んでしまうワケだ。さらに従業員は続けて、

  「子供が触りやすくするために、カブトムシが隠れやすいような場所を少なくしているんです。なので、暑さや日光を避けることが難しくなっている部分もあります。そうした理由もあって、毎年多くのカブトムシが死んでしまうんですよ」

とも話していた。

 なお従業員によれば、今年は幼虫の育ちが悪く、充分な数のカブトムシを仕入れることができなかった。そのため、例年よりも早く閉園せざるを得ない事態となってしまったという。


拡散写真も「暑さが原因である可能性はかなり低い」

 それでは、もう1つの噂の出元となったツイッター写真は、どうなのだろうか。先述したように、木の周りに大量のカブトムシの死骸が落ちていたものだ。

 こうした状況について、写真を見た小島助教はまず「映っているのはシマトネリコという樹で、なんらかの条件が揃ったときに多くのカブトムシを引き寄せることが知られています」と説明。その上で、

  「カブトムシはクヌギの樹液に来るときと違って、シマトネリコの樹皮を積極的に傷つけて樹液を出します。1つ考えられるとすれば、この木の管理者が、トネリコの木がカブトムシによって傷つけられたことに気付き、殺虫剤を撒いた可能性があります」

と分析。「いずれにしても、暑さが原因である可能性はかなり低いと思います」としていた。

J-CASTニュース 8/19(日)付記事抜粋



猛暑で観察施設のカブトムシ激減 衰弱死が3千匹

 兵庫県市川町下牛尾の「リフレッシュパーク市川」内のカブトムシ観察施設のカブトムシが7月以降、次々と衰弱死し、残り数十匹となった。同パークなどによると、累計で3千匹近くが死んだという。猛暑の影響とみられ、過去約20年間で例のない被害という。

 同パークの「かぶとむしど〜む」は1996年から毎年夏季限定で営業。例年、ネットで囲われた約千平方メートルのコナラ林に数百匹を放ち、その後、死んで減る分を補う。今年は6月下旬に約250匹を放ったが、補っても追い付かない状況が続いている。受託運営する昆虫飼育用品販売会社「クワちゃんハウス」(姫路市)は「厳冬でもともと幼虫が少なかったところに、暑すぎる夏。あちこちで買い集めてもとうてい足りない」。

 気象庁によると、同町に近い福崎町の観測点では、7月14日以降14日連続で猛暑日となり、24日には過去最高の38・8度を記録した。同社は「ネットで囲っている以外はそのままの自然環境。これだけ暑い日が続いて雨も降らないと、対策がない」と肩を落とす。

 一方、同社は「全滅したわけではない。少し気温が下がる夕方などにのぞきに来てもらえたら元気なカブトムシが待ってます」と19日まで営業を続ける。リフレッシュパーク市川TEL0790・27・0313

神戸新聞 2018/8/14付記事抜粋